人工関節・人工骨頭編
そう入置換した日が障害認定日
変形性関節症や外傷によって人工関節、人工骨頭に置換した場合、術後の関節可動域、筋力の状態にかかわらず、置換の事実だけで3級に認定されます。
一方で、変形性関節症や外傷によるものだと、影響を受ける部位はその特定の関節にとどまることが多く、2級以上にはなりにくい障害認定基準になっています。そのため、原則として障害年金を受給できるのは、初診日において厚生年金の被保険者であった方に限られています。
障害認定日は、原則として初診から1年6カ月経過後とされていますが、人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、障害認定日は「そう入置換した日」になります。(1年6か月経過後に装着する場合は、障害認定日は原則通り1年6カ月経過時点です)
POINT
つまり!
1年6カ月待たなくても障害年金の請求はできます。
実務上、圧倒的に多いのは、先天性股関節脱臼などの幼少期の股関節異常、臼蓋形成不全がある変形性股関節症です。こうした後遺症や形成不全による変形性股関節症が、全体のおよそ80%を占めていると言われます。(公益社団法人日本整形外科学会)
「幼少期に何らかの処置をした」「生育中に手術をした」などを経て、成人後に股関節に痛みを生じて受診を再開する、というケースがしばしばあります。こうした場合の初診日はいつになるでしょうか。
これらは一見すると20歳前に傷病が生じて医療機関を受診しているので、障害基礎年金請求と考えてしまいがちですが、病歴によっては、成育後に痛み等が生じて再診した日を障害年金上の初診日として認定されることもあります。
働いていても障害年金の受給は可能
障害認定基準では、人工骨頭、人工関節をそう入置換したものについては3級以上に認定するとされています。厚生年金加入中に初診がある場合、障害年金を受給できる可能性があります。(国民年金の場合はこの条件だけでは満たしませんが、日常生活状況等によっては認定の可能性があります)
肢体の診断書は記載項目も多く、計測などもありますので、こうしたことに慣れている整形外科やリハビリテーション科などで記載頂く方が間違いありません。
人工関節・人工骨頭編の障害年金事例紹介
大腿骨頚部骨折(人工関節) 50代女性 転医
転倒事故による初診より4年間に渡り、一つの整形外科に通われていたが、
痛みにより日常生活への影響が大きく、肉体的にも負担だったとのこと。
通院の中で医師へ障害者手帳と障害年金の話をしたが、
「とても該当しない」と言われたため
半ば諦めの心境で当事務所へご相談いただいたとのことでした。
伺った、経緯や日常生活状態からはちょっと「?」という点も多く、
一度、他の病院受診をお勧めしました。(通常はこういったことはしておりません)
受診したところすぐに手術となり人工関節置換となりました。
その後、当事務所にて障害年金請求をご依頼いただき、無事受給となりました。
坂田の意見・感想
当事務所は、医療機関の診断に口をはさんだり、転院を勧めたり、
そういったことはもちろん好きではありませんし、病院のご紹介というのもしておりません。
ご本人が認識していない中で、治療により改善とまでいかなくとも、
なんとか状態が保たれているということもあるかと思います。
そのため、障害年金目的の転院などはもってのほかだと考えます。
ただ今回のように明らかにおかしい、というケースも少数ながらあり、
「大変稀なケースとしてこうしたこともあります」という例でご紹介しました。
今回は自治体にご相談いただいた上で、転院先の検討をお勧めいたしました。
結果的に障害年金請求となりましたが、前記の病院には十分な協力が得られず、
残念ながら遡及での請求はできませんでした。大変残念です。
心苦しくはありますが、どんなに優れた社会保険労務士でも、
医療機関の協力が得られなければ、やはり良い結果は生まれません。